作品裏話


 思いっきりシリアスなファンタジーを書こうと始めたはずなのに、いきなり『なんちゃって』ギャグになってしまった。
 結局シリアスになりきれないのね、クスン……☆

 で、この話には、あちこちに、あさぎりの過去の作品のネタが散らばっているんだけど、実はそれは逆でしこっちが本家本元です。
 これは、あさぎりにとっての『こだわりの世界』でして。
 小学校6年の頃、マンガを描き始めた時点で、すでに自然発生的に頭の中にあった世界です。

 日々増殖しつつある彼らの世界はあまりに漠然としすぎていて、プロとして他人様に見せる形の作品にはなかなかなってくれませんでした。

 今回書くにあたっても、最低限の読み物としての形をとるために、かなり世界観やキャラ設定をいじりました。ついでに、名前も変えてしまいました。
 実は、元ネタでは全員外国名なんです。なんとなれば、あさぎりが子供の頃の少女マンガは、外国が舞台の話が多かったからなんです。
 まだ、海外に憧れのあった時代なんですねー。いや〜、トシを感じるったらないわ。

 だいたい『千年王国』なんてタイトル自体、今回、無理矢理こじつけて考えたもので……。誰にも見せることのなかった世界には、タイトルさえもついてなかったんですね。
 というわけで、この『千年王国』も、あさぎりの頭の中にある本家本元の世界の、ちょっと歪んだコピー的な作品になっています。

 今回の主人公、ナギも、名前も設定も大幅に変えました。
 元々は、徹頭徹尾真面目を絵に描いたような天才少年医師で、こんな女々しい性格ではありませんでした。

 あんな妙な性格のかーちゃんも出てこないし……。
 三回目から登場するルイとの関わり方も、『千年王国』用にこじつけたものです。
 他人に見せるための読み物として、ここでこんなふうに出逢っていた方が劇的だなとか考えてしまうのが、やっぱり長年ストーリーを作り続けてきた人間のサガですかね。

 あさぎりの頭の中にある世界では、もっとそれぞれ勝手な日常を送っているだけなんですけどね。

 ああ、そうだ、ルイといえば、彼だけ元の名前そのままです。
『僕達シリーズ』で、名前を漢字にしただけの形で使ってしまったもんで、今さら変えても不自然になるだけだなと思いまして……。
 蠍の刺青は、『雪之丞事件』の真崎が胸にしていましたが、読み進んでいただくとわかるようにルイがしていたものです。

 形にするのは諦めていたとはいえ、なにせ小学校以来のお付き合いなもんで、プロになってからのあらゆる作品にその影響は出ているし、ルイほど露骨ではないにしろ、他のキャラも、ちょこちょこ脇キャラとして顔を出したりしてるんでb

 たとえば、デビュー作『光めざして飛んでいけ』や、天才少女ポーリンシリーズに出てきたリードというキャラは、この作品における蘭月にあたります。
 特別気に入っていたというより、脇役キャラとして使いやすかったんですね。アマチュア時代に書いた作品にも、主役として登場してたりするし。

 初めてこの世界観を学園マンガに投影させたのは『あいつがHERO!』です。〈北〉の主要キャラ3人が、竜、一人さん、ジョーにあたります。
 ケンカっ早い熱血漢。天才肌の落ち着いた黒髪の優等生。クールでニヒルな美形脇役。以来、この3人が、あさぎりの作品の基本的なパターンになりました。

 その次が『あこがれ冒険者』です。光児、シン、キングに、光児の親父さんまで。やはり〈北〉の主要キャラからの投影です。
 キングが、何故にキングという名で登場したかといえば、元々本当に王様だったからなんですね。

 さらに懲りずに『アイBoy』の、翔、カイ、ボウイ。ここまでくると元ネタからとゆーより、『あいつがHERO!』からの分岐になりますが。

 そして、『僕達シリーズ』になるわけですが。
 この作品は、泉君というまったく元ネタとは関係のないキャラに、由鷹、瑠偉、彗ちゃんなど元ネタの色合いを残したキャラが、勝手に引っ張られて絡んできたって感じです。
 泉君と彗ちゃんの異母兄妹設定や、『あこがれ冒険者』のシンとミィの生き別れ兄妹設定も、こだわる理由がちゃんとあるのですが、そこまで書けるかどうかはちょっとわかりません。

 あさぎりの頭の中にある世界は、四つの王家の非常に長い長い物語でして。たぶん、書けるのは、そのほんのさわりだけだと思います。
 今回、ナギの話から始めたのは、彼が一番最初にできたキャラの1人だからです。
 小学校6年の時、〈南〉と〈東〉の王家の物語としてポッと浮かんだ時には、対立する2人の王子と、医師をめざす少年と、三つ子のお姫様達との物語だったんです。
 そこに、さらに〈西〉が加わり。敵対していた〈北〉の主要キャラ3人が形になったのが、中学の3年ぐらいの時だったでしょうか。

 その時点で、ルイは王様として存在はしていたけど、褐色金髪という設定が決まったのは、高校を卒業する頃だったと思います。
 よく覚えてないけど、最後に形になったキャラであることには間違いないんですよ。なのに、一番色々な作品に、そのままの姿と名前で顔を出している。つまりは、気に入ってるってことなんでしょうね。
 そして、今、あさぎりの頭の中で最も活躍しているのも〈北〉の連中なんですねー。やっぱり野蛮人が好きなもんでー。

 突然ですが、あさぎり、『三国志』で一番好きなキャラは猛獲なんです。
 最初は張飛が気に入ってたんだけど、猛獲が出てきたとたん、あまりのバカさ加減に、コロッと転んじゃってー。
 孔明さんと戦って、7回捕らわれて7回釈放されて、最後には孔明さんに心酔してしまった蛮族の王です。
 ホント、知性と野性の対決ってのが、とことん好きなんですよ。

 で、話しは戻りますが……。
 読んでいただくとわかると思いますが、元ネタのルイは、キングや瑠偉よりさらに強烈です。自然の理や運命を重んじるなんて、おきれいな考えは微塵もありません。

 砂漠を素っ裸で駆け巡ってるんですから、もう、めいっぱい自然に反抗しまくってます。脱水症状になるぞ、お前〜って感じですか。
 美人が好きだし、好みの相手には所かまわず手を出すし、実際に書いてみて、こんなヤツだったんだなぁと思ってしまいました。

 ともあれ、こんな感じで、長い長い『こだわりの世界』の一端を、ルイの王位継承の話に、無理矢理ナギを絡めて形にしてみました。
 予定では、最低でも第一章が十回。第二章が何回か続くはずです。
 たぶん、文庫本1冊ぐらいの長さになると思うんですが、ちょこちょこ更新していくつもりですので、気が向いたら覗いてみて下さいませ。
《2001/1/20 あさぎり夕》