2008年10月

 


◆2008年10月28日(火曜日)あさぎり夕

著者校も終わったし、イラストもFAXで送ってもらって見せていただいたので、新たな出版社の仕事をお知らせします。

角川書店のThe Ruby(ザ・ルビー)Vol.5という雑誌に掲載されます。
イラストは高久尚子さんです。
私の好きな透明感のあるナチュラル系の絵を描かれる方です。

実は、高久尚子さんは、以前パレット文庫でイラストを描いていただく予定があったのですが、小学館がBLから撤退する1年ほど前のことで、色々と慌ただしい状況の中で書いてもいい作品にはならないだろうとお断りした経緯がありまして。

今回のことで他の仕事をすべて白紙に戻しても、さすがに二度もキャンセルすることはできないと、高久さんとの仕事だけは残しておいたのです。

今年に入ってから角川の編集さんとは何度も打ち合わせをして、ストーリーはほとんど頭の中にできていて、あとは書くだけという段階でした。
ただ、今回はまともに物を考えられる余裕のない状態だったもので、本当に書けるのだろうかという不安はあったのですが、いざパソコンに向かうと高久さん絵が自然に動いてくれて、それに引っ張られるような感じで書き上げることができました。

100枚程度という予定だったのですが、例によって書きすぎて、30枚ほど増えてしまいました。
短くていいや、と泣き言を漏らしたのは誰? という感じです。
現在の私の状況を考えると先々のことはまだなんとも言えませんが、どうにか雑誌に穴を開けずにすんだと心底ホッとしています。

タイトルは『公爵と呼ばれる男』です。
貴族物? さて、それは読んでのお楽しみですが、今から言っておきます。またかと思うほど、あさぎりパターンてんこ盛りです。どれもこれも好きなネタではあるんですが、でも、今回ばかりは私だけの責任ではありません。すべて編集さんのリクエストに答えた結果ですので。


で、ひとつ仕事が終わったので、少しずつ時間を見つけて他にも取りかかろうとは思っています。
母の足のことも考えて家のリフォーム を始めてしまったので、朝からトンカンとうるさい中、まずは『ダイヤモンドに口づけを8』だけはやってしまおうかと。

本来なら9月頭には絵師さんにお渡しする予定で進行していたので、ラスト1章を残した段階でストップしている状態でして、できれば今月中に仕上げたいと担当さんに話してはいたのですが、リフォーム業者さんが毎日のように出入りしてなかなか仕事に集中できず、それはちょっと無理そうです。

まあ、慌ててもしょうがないので、ゆっくりと書いていこうと思っています。
いつとはお約束できませんが、でも、必ず出しますので、気長にお待ちくださると嬉しいです。


◆2008年10月18日(土曜日)あさぎり夕

前回の日誌は、父の入院のために仕事をキャンセルしたといういきなりの報告で、本当にご心配おかけしました。
一昨日、ひとつだけ残していた雑誌の仕事が終わりました。
父が倒れて以来、あんまり疲れきってもう仕事は無理かもしれないと思ったこともあったので、一本書けたことでホッとしてます。気持ちが落ち着いたので、少し詳しい状況を説明します。


8月26日の夜に、お酒を飲んでいる最中に父が突然動けなくなって、言葉はなんとか話せるのに左の手足が麻痺状態だったので、これは右脳に何かがおこったなと思い、すぐに救急車を呼んで脳外科のある病院に搬送してもらいました。
母と私が付き添ったのですが、母には高血圧の持病があって興奮すると一気に200くらいまで上がってしまうもので、病院についた段階で座っていることもできなくて、空いているベッドで休ませてもらうような状況でした。

思った通り父は右脳に血栓があって、それは薬で処置ができたのですが、以前にも軽い脳血栓をおこした跡があると言われて、やはりと思いました。
ここ1年ほど頻繁に転ぶようになっていて、いつ大ケガをしても不思議ではない状態だったんです。
そんなこともあって私の仕事も押してしまうことが多くなってしまって、付き合いの長い編集さんには、両親が入院とかになった場合のことを事前に話しておいたんですが、それが現実になってしまったわけです。

とはいえ、救急で入った病院に入院するほど重篤ではないとのことで3日ほどでリハビリ専門の病院に移ったのですが。ちょっと色々問題がありまして、病院を三カ所替わったあげく、ようやく介護老人ホームに腰を落ち着けることができました。
今はヘルパーさんについてもらって、毎日リハビリの散歩を続けています。

でも、実際の介護以外にも他人には頼めない雑務がそれこそ山のようにあって、私はむしろそちらに追われている毎日です。
同居人は保証人になれないので姉の判子を借りて、自分のと父のと母のと合わせてよっつの判子を持って病院や銀行を飛び回り、いったい何十枚の書類を書いたことか。
1ヶ月はそれだけで過ぎました。

仕事に手をつけられる状態になったのは9月末で、100枚の読み切りを書くにしても時間的にもギリギリだったもので、
「もう短くしちゃうからいいよ」
と、母に愚痴をぶつけたりもしたのですが。
そんなことをしてはダメだと叱られました。あさぎり夕としての作品をちゃんと書きなさいと。
母は80になる今も、膝を痛めていてさえ椅子に腰掛けながら食事の支度をするほどの働き者なので、私の泣き言は許せなかったんでしょう。
おかげで、やらねばという気持ちになれました。

その最中にも次から次へと雑務は出てきて、パソコンに向かえるのは夜だけという中で、極限まで睡眠時間を減らしての仕事でした。徹夜をしたのも久しぶりで、これで自分まで倒れたら洒落にならんと思いました。
なんだか自分では冷静な判断ができないんですが、nさんがあの混乱の中で書いたとは思えないほどいつものテイストだと保証してくれたし、担当さんにも面白かったですと言ってもらえたので、なんとなく安心しました。

こんな状況で、初めての出版社で、初めての絵師さんでの新たな作品を書くのは不安もあったんですが、いざ書き始めると、好きなマンガ家さんの絵ということもあってキャラが自然に動いてくれて助かりました。
自分の絵だったら書けなかったと思います。

でも、詳細はもう少しお待ちください。
確実に雑誌が出るという段階になったら、またお知らせします。


◆2008年10月5日(日曜日)あさぎり夕

すみません、9月はまったく日誌が書けませんでした。まったく余裕がなかったもので。そのこともあって、今日は残念なことを書かなければなりません。

実は8月の末に父が脳血栓で倒れ、入院しました。今はわずかに麻痺は残っているものの、意識もしっかりしておりリハビリに励んでいます。
ただ83歳という高齢なもので、目を離せないという状況ではあります。

母も高血圧と不整脈の持病持ちで、さらに両膝が悪いためゆっくりと10分ほど歩くのがやっとなもので、家族と相談しながらどうやって父の介護をしていくかを考えている最中です。

リブレとコバルトの編集さんには、前々からもしも両親に何かがあったときには仕事を減らさざるを得ないことは話していたのですが、すでに今年いっぱいは仕事を見合わせることになるかもしれないと連絡をとりました。
初めての絵師さんとのお仕事や、BL以外の作品も予定していたのですが、残念ながら全ての予定を白紙に戻していただきました。

進行途中だった『ダイヤモンドに口づけを8』は少しずつ書いていくつもりではいますが、いまのところ発売のメドはたっていません。
ほとんどの仕事は雑誌の予告を打つ前に手配できたのですが、『ダイヤ』の書店予告だけは間に合わなかったとのことで、無期延期となっていますが、事情が事情なものでお察しください。

挿絵をお願いしていた作家の皆さんにも、ご心配をおかけしてしまい、申し訳なさでいっぱいです。出版社を初め印刷所さんや書店さん、ノベルズの発行に関わってくださっているすべての方々に、この場を借りてお詫び申し上げます。
本当にご迷惑をおかけしました。

ただ一作だけ、新たな出版社さんと、何ヶ月も前にお約束をしていた仕事がありまして、雑誌掲載の100枚くらいの作品ですし、たとえそれが文庫化されるにしても来年の初夏あたりになると思うので、それだけはなんとか書かせていただくことにしました。
でも、それすらギリギリの進行になってしまって、前半部分を渡したところで、ちょっと一息ついてこの日誌を書いています。

そんなわけで、今年いっぱいは文庫もノベルズも発売されない可能性が高いです。
今まで定期的に仕事をしていただけに急にパタリと書かなくなると、私自身に何かがあったのかとご心配なさる方もいるかと思い、内輪の事情ではありますがご報告することにしました。

私にとって作品を書くことは呼吸するのと同じほどに自然なことなので、あさぎりの本を待っていてくださる読者の方がいるかぎり、ゆっくりですが書き続けていきたいと思います。気長にお待ちいただけると嬉しいです。

それでは、これから唯一残した仕事の後半を必死に書きます。
締め切りは10日、頑張らねば。